酔狂(1)鮒寿司と鮒

2011年7月3日

、塩、米、温度、発酵 ]

鮒寿司を構成するの主たる食材はもちろん鮒です。
鮒寿司のブランド的な価値としてはニゴロブナが最高とされています。

<ニゴロブナ wikiより>
<ニゴロブナ wikiより>

鮒寿司は乳酸発酵によって肉を熟成させてた食べ物です。
食肉にはエージング(熟成)という用語があります。

動物は命が絶えると筋肉の硬直が起こります。いわゆる死後硬直です。
「うわぁ〜このお刺身の食感、プリップリ〜♪」という感想が洩れるような
鮮度の良い刺身を楽しむとは、いままさに命が絶えて筋肉が硬直を起こした
プリプリの肉の食感を楽いむ事と言えます。

エージング(熟成)はその後、肉自体の持つ酵素の働きによって、
筋肉が柔かくなっていくとと同時にタンパク質が分解されて
旨み成分のアミノ酸などが増していく過程の事です。

徳山鮓のご主人は言いました。
色んな鮒がある中で皆さんが何故ニゴロを漬けるのでしょうか?
他の鮒でも漬ける事はできます。そしてそのニゴロでない鮒でも
美味しいよと言います。でもそれは鮒の味を食べているのでなくて
発酵の味を食べているんですね

私たちは鮒寿司は発酵食品としてとらえています。しかし
発酵食品という考え方の光を当てる事で、そのあまりの眩しさで
逆に魚の身の味を感じることを忘れがちである、と言えるのかもしれません。

徳山鮓の鮒寿司(徳山さんは鮒鮓と表記されますが)を食べた人なら
分かると思いますが、徳山鮓の鮒寿司は発酵食品とはいうものの、
あまりにも発酵的な抵抗感がない、あっさりとした鮒寿司に仕上げられています。

ご主人の話された言葉の内容と照らし合わせて考えるに
発酵とは鮒の肉の旨味をエージングによって更に増していく手段である
という明確な意図を感じずにはいられません。

そして、その手段によって最も旨味を味わえる鮒がニゴロブナなのだと
仰っているように思います。

ある一定の熟成の期間に人間がどのように手を加えてゆけば
より鮒の肉が美味しくなるのか?その目的の為に出来る工夫は何なのか?
徳山さんはハッキリとはお話しされませんが、そんな基準から
塩、米、温度、発酵に工夫を凝らしておられるのだな、と話を伺って思いました。

< 内部リンク >
徳山鮓 2度目の夕べ 料理編
酔狂ですか?鮒寿司を作るこだわり
鮒寿司の味の本質は発酵によるものではない?
鮒寿司の桶の中でどんなことが起きているのか? 2
podcast 39 宮本輝「にぎやかな天地」に書かれた鮒鮓

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