酔狂(2)鮒寿司と塩 その3
2012年1月18日
今年度(2011年夏)は減塩の鮒寿司を作ってみましたが…
先日、桶から鮒寿司を取り出してみた所、
随分と発酵が進みすぎていて、上層部の2層目くらいまで
身崩れしてしまう程柔らかくなっていました。トホホ〜
減塩と言っても、飯漬けのご飯に塩を使わなかっただけなんです。
今まではPDFファイル「鮒寿司の作り方」でも書いていますが、
おにぎり程度の塩分濃度のご飯で飯漬けをしました。
おにぎり程度の塩分の違いといっても、
それが発酵のスピードを左右しているとの指摘は
ネットの記事などでも、あちらこちらで見受けられますが、
私もそれを実体験として確認した訳です。
下記にリンクを貼っておきますが、滋賀大学の堀越教授なども
そのような指摘をされている様ですね。

<鮒寿司桶を初開封 01.12.13>
今回は昨年12月13日に桶を初開封しました。
その時は一匹だけ取り出して味見をしてみたのですが、
漬かり方がもう少し浅いように思いました。
それでもう一月ぐらい寝かせた方が良いかな、
と思ったわけですが、寝かせ過ぎでしたね。
塩を使うか、使わないかだけでこんなに
発酵のスピードに変化があるとは!
そのスピードに驚いています。
しかし、1つ学びました。
塩の濃度で発酵のスピードをコントロールする訳ですね。
または塩を減らした上で時間を管理する、といったところでしょうか。

<鮒寿司の飯漬け開始日 11.08.05>
今回の経験からですと、
2011年8月5日に飯漬けを開始し、
2011年12月13日(131日目)では漬かりが浅いように感じ
2012年1月16日(165日目)では溶け始めているので、
その中間の148日目、つまり2011年12月31日頃が
漬かり具合が最もいい時期ではなかったか、と推論されます。
塩分少なめで漬かり具合のよい鮒寿司をいつでも食べたいと思えば、
148日前後(5ヶ月弱)に開封し、一旦取り出して真空パックし、
冷凍保存しておくのが良いのかもしれません。
その年の気温や桶を保管する場所、重しの重さによっても
違いがあるでしょうから、あくまで目安の話ですが。
鮒寿司を漬けておられる実践者の皆さんは
どう思われますか?
(↓黄緑色の三角をクリックすると音声が流れます)
<内部リンク>
酔狂(2)鮒寿司と塩 その1
酔狂(2)鮒寿司と塩 その2
小生は塩分は富岡さんより少ないはずで、味もかなり薄味だと思っています。
一段つめたのち、握り飯にすれば十個くらいの飯に、軽く塩を振りますが、桶の周囲を重視してまいています ので、小生の味は薄味です。一度、富岡さんに送ろうかと思っています。
小生は六月中旬から末ころに漬け、十二月二十日頃のあとに出します。最終は三月末から、時には五月初めまでですが、その間、味の大きな変化はありません。
一回に五匹ほどだし、冷凍して、いつでも食べられるように準備しています。
以上の事から、塩分と発酵度は小生を見れば発酵度は変わりないと思っています。
変わった例で、知人が開けたのちに再度「ヨーグルト」を加えたのですが、その時にはもう完全に溶けてしまったようです。
高原様
いつもコメントありがとうございます。
また、貴重な情報をありがとうございます。
以前、高原さんがオフ会で食べて頂いた、私の鮒寿司は
2010年に漬けた鮒寿司です。その鮒寿司は
握り飯で食べる程度の塩を使いました。
しかし、2011年に漬けた鮒寿司は塩を使っていません。
塩の量は
2010年の私の鮒寿司 > 高原さんの鮒寿司 > 2011年の私の鮒寿司
こんな感じになろうかと思います。
高原さんの鮒寿司では、
> 握り飯にすれば十個くらいの飯に、軽く塩を振ります
(私が2010年に漬けた鮒寿司の1/10程度の塩の量でしょうか)
とのことですので、次回はその程度の塩分濃度にしてみます。
ありがとうございました。
桶の上部に漬けたふなずしが溶けてしまっていたというご報告に、そんなになるものかと驚いています。
昨夏に沖島で初めて挑戦した私の場合は、飯漬けの際は一切塩を使わないという方法でした。手水に日本酒を使うので、醗酵が早く進むのかと思っていましたが、何分初めてなので、比較の仕様がありません。7月12日に飯漬けしたものを自宅まで配送して貰い、7月14日に最上層に飯を足しました。午前9、10時頃から昼中過ぎまで陽のあたる屋外に置きました。蓋を開けたのは11月27日で、少しずつ取り出して食べています。
ところで、12月から先週まで、龍谷大学の公開講座でふなずしの歴史を話したのですが、最終日に受講生の方数人とふなずしを味わう時間を持ちました。その際、持参戴いた3年ものを味わいましたが、私のものよりは少し酸味が強いと思っただけで、美味しく食べることができました。昨年5月の試食会で冨岡さんから戴いた3年漬けのふなずしは、ほとんど溶けたような状態だったので、その時は3年経つとこんなものかと思いましたが、同じ3年ものでも大きな違いがあるということにまたまた驚かされました。そういえば、司馬江漢も天明8年(1788)8月に日野の中井家で3年漬けた「酢し」を食べていますね。
櫻井様
いつもコメントありがとうございます。
私が漬けた3年ものは一度漬けて2年経った物を、飯を漬け代えてもう一年漬けた物です。
合計で3年になります。3年間同じ桶の中で寝かせている物とは別物と考えた方が良いと思います。
私たちは一言でふなずしと言えども、例えば象の鼻だけや脚だけを賑やかに論じていて
その全体像を把握するのはなかなか難しい事なのかもしれません…。
司馬江漢のエピソード、面白いですね。何か感想など残っているのですか?
三年もの・・・〇物という考え方は・・・・万病の薬にあげられる「百年物の梅干し」と同じでは無いでしょうか。梅干しはからからに乾いて、味は無い・・・という話を聞きました。 何年ものは、忘れたものから発生した、偶然のもの・・・ではないでしょうか。
富岡さんの桶の上部の漬けたものが溶けていた・・・・というのは、どんな条件なのか、気になります。
鮒ずしも、端境期のための保存法、とは言い切れないように思いますし、歴史の中に生まれた「遊び」が積立てられて、(神事や仏事なども)いろんな食品が伝えられているのだと思います。
しかし、溶ける事は以前に言った「かって知人が「ヨーグルト」を混ぜた時、完璧に溶けた」ありました。
滋賀県の水産試験所でも、聞いてみたいと思っています。
高原様
いつもコメントありがとうございます。
自分がイメージする鮒寿司を作ろうと思うと、
なかなか思うように行きません。
難しいです。
今の所、私にとっては「何年もの」という括りは
単に桶に書かれた年式でしかありませんが
中身がまだ残っているので、おっしゃる通り「遊び」を
楽しんでみたいと思っています。
司馬江漢の『江漢西遊日記』には「三年漬たる酢しを出す。至て珍物なるよし」とあります(芳賀徹・太田理恵子校注『江漢西遊日記』〈東洋文庫461〉平凡社、1986年)。感想があると良いのですが。