琵琶湖産の魚のナレズシ、県外産の鮒のナレズシ

2010年11月03日

鮒寿司が結ぶ人の出会いの続きです。

<戸田さん提供ナレズシ6種>

<戸田さん提供ナレズシ6種>

戸田さんが提供された鮒寿司は写真の下左から
カマツカワタカギンブナ(の三枚おろし)
ウグイニゴイハスのナレズシだそうです。

といっても、正直琵琶湖の魚について殆ど知識がない私は
名前を聞いて、その魚の形がイメージできるのは正直ありません (^^ゞ
初めて食べましたが、どれもとても美味しいナレズシでした。

そのナレズシをつまみながら戸田さんから話を伺いました。
これらの魚は戸田さんが3〜5月頃漁をされた魚だそうですが
二束三文にもならない魚だそうです。
誰も買わないので商品価値が無いのだそうです。

これらの商品価値のない魚は多数網に掛かりますが
売れる魚の選別している間に死んでしまって、
そのまま琵琶湖に廃棄される事が殆どだそうです。

しかし、それでは魚に申し訳ないと戸田さんはこれらの魚を
ナレズシにして食べたり、親戚に配ったりされているそうです。

最近漁師の方でもおられるそうですが、簡単に手に入る
岡山産の鮒や、北の海を渡った所からの鮒を使った鮒寿司が
出回っているのだそうです。それらの鮒寿司は大きな看板を
背負った店でも見受けられるそうです。

ですが、そうではないんじゃないの?という
思いが戸田さんにはあります。

琵琶湖で泳いでいる魚を使ったナレズシを使ってこそが
滋賀のナレズシ文化ではないのか!という思いです。

私も色々考えて来た中で、
滋賀の文化、地域特産としての鮒寿司を考える立ち位置として、
大きく二つの考え方があると私は思っています。

一つは「地域の産物」を軸に考える事。
もう一つは「発酵」を軸に考える事です。

「鮒寿司」はこれら二つを利用した食べ物だと、
一般的には認識されています。琵琶湖の水産資源である
鮒(ニゴロブナなど)と、滋賀のお米を使った
ナレズシであるとの認識です。

ところが、戸田さんがおっしゃられるように
実際はそうとは言えない様なのです。

鮒寿司が生産されている量は年間200トンと言われています。
(この200トンとの数字は業界で言われている数字で、
その根拠を私は把握していません)
その一方で、以前に県の水産試験場でも伺いましたが
平成二十年でニゴロブナの漁獲高は39トンとなっています。

単純にこれらの数字から比率を計算すると
鮒寿司に占めるニゴロブナの割合は約2割となります。
琵琶湖産の鮒全般で言っても100トン程度ですから5割です。

<水産試験場で頂いた資料より>

<水産試験場で頂いた資料より>

残りの5割が県外から持ち込まれた鮒が使われたり
県外産の中には国を越えて中国産の鮒も使われる、、、
このような状況が発生したのは琵琶湖の鮒が激減し始めた、
昭和の終わり頃からではないかと思います。

最初は業務用として製造されている鮒寿司業者の中で
お客さんの需要を満たせなくなった代替対策として
県外産に原料を求める所が出て来たという事ではないでしょうか?
注文があっても商品が作れないというのは商売としては致命的です。

また、代替商品を開拓していく努力は大切だと思いますし、
鮒寿司の限らず、日本の産業は代替商品の開発の歴史でもあります。
この立ち位置の発想は「発酵」を軸にした発想だと思います。

発酵を軸に考えるから
「鮒寿司用の地元産の鮒が激減したなら県外に求める」
となります。

しかし、「ナレズシが鮒でなければいけないのか?」という問いは
鮒寿司製造者も消費者もあまりしてこなかったように思います。

現実として
5割が地産でない鮒のナレズシが消費者に
受け入れられているのであれば、
鮒ではない 地産のナレズシというのも
受け入れられる余地は十分にあると思われます。

如何でしょうか?

<外部リンク PDF資料>
県特産ふなずしの原料となる 琵琶湖産フナの漁獲量.

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