琵琶湖は既に日本一デカイ養殖池となっていた

2010年4月15日

先日、滋賀県水産試験場でお話をうかがう機会を得ました。
以前にフナズシ品評会に参加した話は書きましたが
その時の縁がいろいろ繋がって、実現しました。

<滋賀県水産試験場の玄関>
<滋賀県水産試験場の玄関>

ビデオも持参して、貴重な映像も撮影したつもりが、、、、
家に帰ったら何も撮れていませんでした。
オン、オフのスイッチングが逆だったようです。
ショック!

脱力しましたが、何とか気を取り直して
文字と画像だけでお伝えしたいと思います。

一時間半程、鮒寿司の話に始まり水産試験場が
減少してしまったニゴロブナを増やす取り組みとして
どのような事をやっておられるか?
お話を伺いました。

今回はその中で、衝撃を受けた話を一つ。

昭和五十年代まで鮒類で6百〜1千トンも漁獲高があったものが
平成20年では百トン前後、ニゴロブナだけに至って
39トンまで落ち込んでいます。
それでも最悪時期に比べ若干の増加が見られるとの事です。

ちなみに、この統計は近畿農政局による統計の数字です。
以前は各漁協へ電話による聞き取りだったそうですが、
現在はアンケートの郵送によるデータ収集だそうで、
精度には若干?の部分もあるかもしれません。

さらに付け加えるなら、鮒寿司の販売する業界内では
鮒寿司の生産高は200トンと言われているそうです。
この数字の根拠は分かりませんが、鮒寿司を製造販売されている
会社の社長さんから聞いた話です。

この数字に従えば、市場に出回っている
ニゴロブナの鮒寿司は20%程度となりますね。

その他、ゲンゴロウブナ、ギンブナ、県外や中国産の
鮒を使った鮒寿司が80%程度であるとなります。

<水産試験場で頂いた資料より>
<水産試験場で頂いた資料より>

ニゴロブナは水産資源ですから、滋賀県水産試験場としては
増やす取り組みをされる訳です。

はじめ頃は人工的に稚魚の養殖に取り組まれたようですが、
なかなか簡単には養殖はうまくいかなかったようです。

ところが、栽培漁業といって水田へ孵化した仔魚を
放流して養殖した所、今までの苦労が何だったのか!と
思うくらいに、うまい具合にニゴロブナが育ったらしいです。
餌を与えるという必要もなく、この育て方が成功した時は
衝撃的だったらしいです。

今では琵琶湖周辺の田んぼ670反を使ってニゴロブナの稚魚を育て、
田んぼの中干し時に排水経路から琵琶湖に放流してるとのことです。
放流規模は1000万匹という規模だそうです。

また、さらに秋まで育てて120mm程度の幼魚にしてからの放流も
されるそうです。

これら放流魚には標識が付けられます。
どうやって標識を付けるかというと、ニゴロブナの
耳石という骨を成長段階で何度か染めるらしいです。
(ALC標識というらしいですが、ここではあまり踏み込みません)

すると、その骨は木の年輪のように幾つかの輪ができます。
染める時期をズラして何種類かの年輪のパターンで
タグを作り、そのタグを付けた状態で放流される訳です。

琵琶湖で成長して大きくなり、捕獲れたニゴロブナの
耳石を確認し、年輪の有る無しやそのパターンで
統計を取っていきます。

その結果が、以下のグラフです。

<水産試験場で頂いた資料 混獲率>
<水産試験場で頂いた資料 混獲率>

要は琵琶湖で穫れたニゴロブナの内、何%放流したニゴロブナが
混じっているかのグラフですが、直近では約90%です。

つまり、琵琶湖で穫れるニゴロブナの90%
人間によって一旦育てられた放流魚
であるという結果です。

一枚目のグラフの通り、漁獲量はここしばらく横ばいですので
逆に純天然といいますかニゴロブナが自力で繁殖している量は
減少の一途といえます。

これは危機的な状況ですねと言いますと、お話をして頂いた
職員の太田さんは頷いておられました。

漁獲量は増加も見られるものの、琵琶湖の環境は
ニゴロブナが産卵し20mmまで自力では成長が難しいという
環境であるのですね。

むむむ、

より大きな地図で 鮒寿司の壁マップ を表示
(※注 最後まで読んで頂いてありがとうございます。
私は「琵琶湖の生態系はただ人間のエゴだけで維持されている」という
見解をもっている訳ではありません)

コメントをどうぞ

コメント欄